Profile
2012年の入社後より複数のジャン・フランソワで経験を積んだ後、2019年からメニュー開発担当となり現在に至る。パン業界に長くいるが、好きな食べ物は秋刀魚や豚汁といった和食。休みの日はサウナに行ったり散歩をしたりと、リラックスすることを心がけている。いつか独立してベーカリーを開業するのが夢。
パンづくりと人づくりの両側から、店舗の価値を支える
現在、私は株式会社グルメブランズカンパニーの統括シェフブーランジェとして、新商品の開発や製造に関わる業務全般を担当しています。新しいパンの試作や既存商品の品質管理はもちろん、製造スタッフの採用から育成まで、製造に関わるすべての工程が私の業務範囲です。
パンは見た目の美しさも購買の決め手となるため、丁寧な仕上がりを常に意識していますし、その思いは、製造スタッフへの指導にも反映させています。特に経験の浅いスタッフには、最初は時間がかかっても構わないので、正しい製法を身に着け、丁寧に仕上げることを大切にしてほしいと伝えています。
そうした日々の取り組みが実を結び、当社で運営している店舗の開店周年企画で開発したメロンパンが大ヒットとなりました。当初は、一店舗限定で販売する予定だったのですが、お客様からの反響が大きく、現在では全店舗で販売を行い、最も販売個数の多い人気商品になりました。
店舗運営のサポートに入る際は、各店舗の製造責任者とのコミュニケーションが重要です。現場で起きている問題や悩みを一番理解しているのは彼らですので、できる限り親身に相談に乗るように心がけています。トラブルの早期発見や未然防止には、やはり密なコミュニケーションがポイントになりますね。
グルメブランズカンパニーはクリエイト・レストランツグループの中でも比較的小規模な会社ですが、店舗数は少しずつ増えています。すべての店舗に頻繁に足を運ぶことが難しくなってきたのが目下の悩みです。そこで今は、ポイントを押さえた作業手順マニュアルの作成に力を入れています。また、営業部のスタッフとも業務の進捗を共有し、早めの相談を心がけることで、スムーズな店舗運営をサポートできる体制を整えています。
パンづくりへの情熱と新たな挑戦
パンづくりの道を志してからグルメブランズカンパニーに入社するまでの間に、3つのベーカリーで経験を積みました。最初に働いたのは、レストランやパティスリーが併設されたベーカリーです。そこでは職人気質の厳しい上司や先輩のもと、基本的な技術を叩き込まれました。
その後、ショッピングモール内のベーカリー勤務を経て、チェーンベーカリーへと転職しました。当然ながら、それぞれの会社で扱う商品の特徴や価格帯、仕事の進め方は大きく異なります。特に、チェーンベーカリーではマニュアルが非常に細かく整備されていたことが印象に残っています。
チェーンベーカリーでは製造業務を離れ、店長として販売の最前線に立っていましたが、この時の経験は自身の視野を大きく広げるきっかけになりました。魅力的な売り場づくりや、販売スタッフとの連携、商況を見据えた生産管理など、製造以外の重要な要素を学ぶことができたからです。
特に、スタッフとのコミュニケーションの重要性に気づけたことは、自分にとってのターニングポイントになりました。それまでの私は黙々とパンづくりに没頭するタイプでしたが、店長として多くのスタッフと関わることで、情報共有や円滑なチームワークの大切さに気付かされたのです。
しかし、製造業務から離れたことで次第にパンづくりへの思いが強くなり、より製造に深く関われる環境を求めて転職を決意するに至りました。
転職活動中、たまたまグルメブランズカンパニーの店舗を訪れたのですが、店舗の立地の良さ、賑わいのある雰囲気、そして何より高い品質にこだわった商品に強く惹かれました。実は、それまで当社のことは全く知らなかったのですが、実際に店舗を見たことで「ここで働きたい!」という思いを持ったのです。
商品開発への挑戦と成長の軌跡
今までに開発した商品の中で最も思い入れが強いのは、一番売れ筋のメロンパンです。このメロンパンは、前社長の構想を形にしたものなのですが、開発のプロセスは一筋縄にはいきませんでした。“湯種製法”という特殊な生地作りの手法を取り入れることで、一般的なメロンパンとの差別化を図りましたが、多くの人にとって馴染み深いパンだからこそ、違いがお客様に明確に伝わり、多くの方に好評をいただけたのだと思います。
商品開発担当になってからは、新しい取り組みに数多く挑戦してきました。他企業とのコラボレーション商品の開発や、グループ内の別会社が運営する店舗に卸すパンの製造、さらにはフードトラック事業など、過去に経験のない領域ばかりで、やりがいを感じています。
商品開発においては、良い意味で固定概念を打ち破るようなアイデアが鍵となります。使ったことのない食材を使用したり、思いもよらない組み合わせに挑戦したり。未知の経験を重ねることで、商品開発における考え方やアイデアの幅が大きく広がりました。
もちろん、すべてのアイデアが成功に結び付くわけではなく、世間のニーズとマッチせず短命に終わってしまう商品もありました。しかし、失敗から学ぶこともたくさんあります。商品のボリュームと価格のバランスを考え、立地に合わせた客層を意識した商品作りができるようになったのも、失敗あってこそです。
今でもたまに店頭に立つことがあるのですが、お客様から「美味しい」と言っていただけたり、商品開発時の意図を汲んだ評価がもらえたりしたときは、本当に嬉しいですね。自分が生み出した商品がSNSなどで注目され、売り上げに貢献していると知ることで、自分自身の成長も実感できる。そんな充実した日々が送れる環境にいられることを幸せに思います。
品質と人材育成を軸に、新たな挑戦へ
(2025年4月のインタビュー時点で)目前に控える新ブランドの出店は、私にとっての大きなチャレンジです。これまでのベーカリーとは異なる製造オペレーションの構築や、それに合わせた厨房設備・機器の選定、そして新メニューの開発など課題は山積みです。忙しくはありますが、過去の経験を活かしながら、新しい価値を生み出せる可能性にわくわくしています。
ジャン・フランソワとイケダヤマという主軸ブランドの更なる成長に向けては、品質管理と人財育成の体制づくりに力を注ごうと考えています。店舗数が増える中、どの店舗でも同じ品質の商品を提供できる仕組みづくりは非常に重要です。マニュアルの整備や教育体制の確立など、一つひとつ丁寧に取り組んでいきたいと思っています。
グルメブランズカンパニーの強みは、クリエイト・レストランツグループという大きな基盤があることです。パン業界の固定観念にとらわれない柔軟な発想で、新しい取り組みにチャレンジできる環境があります。グループ内には、サンジェルマンやレフボンといった、長年ベーカリービジネスを展開してきた企業もあり、互いに知見を共有できることも、他社にない魅力でしょう。
新商品の開発を任されている今、店舗で働いていた頃の経験を大切にしています。店舗スタッフ全員で協力し、目標を達成する喜びは何物にも代えがたい体験です。お客様から「美味しかった」「ありがとう」という言葉を直接いただける機会があるのも、店舗業務の醍醐味と言えます。
店舗での一つ一つの経験を大切にしながら、周りと協力し、与えられた課題の解決に向けて行動できる方であれば、これからのグルメブランズカンパニーを、そして私たちのブランドを一緒に盛り上げていっていただけると思います。